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SBIソーシャルレンディングの問題を第三者委員会が報告!プロ意識の欠如を指摘

投稿日:2021年4月29日 | 執筆:カナメ先生
SBIソーシャルレンディング

SBIソーシャルレンディングの懸案事項に関する第三者委員会の調査報告が公開されました。調査報告書が長文なので気になる個所を抜粋して解説します。

参照ページ

SBISLの発表 - 再発防止策等について(2021年4月28日)
第三者委員会の調査報告書 - PDF(2021年4月28日)
SBIホールディングス 2021年3月期 決算説明会資料 - PDF(2021年4月28日)
テレ朝ニュース - 太陽光会社が融資金詐取か 特捜部が捜索(2021年4月28日)
朝日新聞デジタル - SBI子会社の貸付先 東京地検特捜部が捜索(2021年4月28日)

第三者委員会の調査報告公開、SBIホールディングスの決算説明会、テクノシステムの家宅捜査の報道、これらが全て同日なのは大人の事情と言うことでしょう。
SBIホールディングスの力の大きさを感じます。

各情報(第三者委員会の調査報告など)から抜粋

善管注意義務違反
SBISLには、貸付審査及びモニタリングの実施に係る業務運営に顧客に対する善管注意義務に反する各事情が存在し、本来であれば顕在化していたはずの多くの疑問点、懸念点が見過ごされてきた。

その結果、本来踏みとどまるべきであった融資を実行し、また、その回収を困難にしているのであり、当委員会は、これらの点において、SBISLの行為が、投資者に対する善管注意義務違反を構成するものと考える。

【第三者委員会の調査報告より引用】

第三者委員会の考えとして「SBISLが善管注意義務違反した」と明言しました。

プロの受託者としての意識の欠如
本件の事象の根底にあるのは、SBISL及びその経営トップにおける、受託者としてのプロフェッショナリズム、そして、金融商品取引業者、匿名組合営業者としての投資者保護に対する意識の著しい欠如である。
【第三者委員会の調査報告より引用】

SBISL、そしてその経営トップの貸付に係るリスク判断は、受託者責任を無視したあまりに不誠実なものである。

「自らの役割は投資者からの「集金」である」と経営トップは述べているが、その発言には、プロとしての意識が全く感じられず、会社全体としても一事が万事、そのような企業風土が醸成されていたのではないか、と推察される。

【第三者委員会の調査報告より引用】

とても厳しい意見です。SBIグループは金融のプロフェッショナルという印象がありましたが、全てのグループ企業がそうだとは限らないようです。

必須スキルの欠如
そもそも SBISLの融資審査では、財務諸表の分析すら十分に行われた形跡がない等、融資審査の基礎的な知見に欠けていた。

また、不動産案件や発電所案件についてのプロジェクト・ファイナンスに対する審査は、高度な専門性が求められるものであるにも関わらず、SBISLは、こうした審査の知見を備えた担当者を配置していなかった。

【第三者委員会の調査報告より引用】

「財務諸表の分析すら十分に行われた形跡がない」というのは酷すぎます。

上場という目標により周りが見えなくなる
SBISLは、2018年12月頃から本格的な上場準備を開始しているところ、2020年3月期の営業者としての売上高は848百万円(前期比114%)、営業利益は244百万円(前期比104%)であった。

これに対し、上場直前期にあたる2021年3月期は、売上高目標を1,119百万円(前期比131%)、営業利益目標を402百万円(前期比164%)として、意欲的に高い目標値を設定して営業活動を実施してきた。

【第三者委員会の調査報告より引用】

経営トップの営業優先志向、貸付残高を是が非でも上げるとの強い姿勢は、そのままSBISLの企業組織の姿勢(企業風土)となり、いわばこれが会社の「正義」となった。

上場を控えた状況の中、上記のような経営トップの姿勢に体を張って異を唱えることは、事実上極めて困難な状況となっていたものと思われる。

【第三者委員会の調査報告より引用】

「フィンテックと言う成長業界で華々しく上場する」という誘惑が杜撰な行動を生み出してしまいました。maneoも似たような状態だったと思われます。

投資家からの指摘は届かず
投資者から、SBISLに対して、熱海案件及び宮古島案件に関して、観光業の状況に鑑み売却についても困難が予想される状況を踏まえ、債権者として売却先のあっせん等の手を打っているのか、問い合わせる旨のメールが届いた。

これに対して、SBISLが、熱海案件及び宮古島案件について、具体的な買手候補や借換資金の貸付人候補による買付や貸付の意向に関する客観的な資料を確認した形跡はない。

【第三者委員会の調査報告より引用】

2020年7月17日、投資者から、SBISLに対し、D14号(馬車道案件)について、該当する工事現場が見つからず、また、D16号及び18号(熱海案件)について、プロジェクト予定地周辺に赴き、近隣で聞き込みも行ったものの、ホテル建設の計画は聞いたことがないとの回答であったため、説明を求める旨のメールが届いた。
【第三者委員会の調査報告より引用】

現地で聞き込みまでしてしっかりとチェックしている投資家がいることは心強いかぎりですが、投資家からの指摘はSBISLに届きませんでした。

当サイトのSBISL掲示板が閉鎖に追い込まれたのが2020年9月ですので、その頃から投資家同士の情報共有を恐れていたのかもしれません。

協業ファンドの罠
SBISLは、上述のとおり、問題があればB社が解決するであろうとの期待等を背景に、A社の工事完成能力に対する職業的猜疑心をもった検証を怠り、プロの受託者としてあるべき審査・モニタリングの職責を放棄した。
【第三者委員会の調査報告より引用】

責任の所在が曖昧になることでトラブルが起こるケースはよくあります。
これもプロ意識の欠如です。

テクノ関係の融資割合は43.8%
A社関連ファンドの合計貸付残高は、2018年3月末時点でSBISL全貸付残高の32.1%、2019年3月末時点で43.8%の規模となり、A社案件への極端な偏りが生じていた。
【第三者委員会の調査報告より引用】

貸付者と当該債務者はいわば「運命共同体」の関係となりがちである(借りて貰うことを頼みやすく、貸すことを断りにくい状態)。SBISLとA社との間には、両社代表者の直接のやり取り等を見るにつけ、そのような関係が相応に醸成されていたものと言わざるを得ない。
【第三者委員会の調査報告より引用】

個人的にはこれが一番の問題だと考えています。たしかに「貸付先の審査やモニタリング」というのは非常に難しいと思います。しかし、特定企業関係の融資割合が43.8%という事実を公表することは簡単に出来たはずです。

SBIホールディングス「北尾吉孝」社長の発言や方針
SBIHDの北尾吉孝社長は「300社以上(のグループ会社)全部を細かく見るわけにはいかない」と述べた。投資家には約145億円かけて元本相当額が返金される。
【朝日新聞デジタルより引用】

なお今後新規ファンド募集は行わず、運用中の全てのファンドの償還が完了した後には、ソーシャルレンディング事業から撤退も視野。
【SBIホールディングス 2021年3月期 決算説明会資料より引用】

北尾社長ならではの率直な物言いです。
ソーシャルレンディング事業からの撤退を視野に入れているとの公式発表です。

テクノシステム「生田尚之」社長の発言
生田尚之社長は「人様から後ろ指を指されるようなことはしていないと言い切れる」と主張していました。
【テレ朝より引用】

2021年2月8日以降、当社に関する憶測報道が一部のメディアで行われております。しかし、当該報道は、当社に対して、一切取材を行わずに一方的に行われた不当なものです。これに対して、当社は、法的措置を含めた対応を検討しております。

また、当社が、SBIホールディングスに設置された第三者委員会から2021年2月15日現在、聴取を受けた事実も一切ございません。

【公式サイトより引用 - 2021年2月15日公開】

社会にはこのような方もいるという事実を忘れないように注意しようと思います。
あらためて「発言」に惑わされないことが重要だと認識しました。

まとめ

・第三者委員会は善管注意義務違反だと判断。
・プロの受託者としての意識が欠如している。
・融資審査では財務諸表の分析すら十分に行われた形跡がない。
・上場という目標により周りが見えなくなる。
・投資家からの指摘も黙殺される。
・テクノシステム関連ファンドは全体の43.8%。
・SBIソーシャルレンディングの事業撤退を視野に入れている。

カナメ先生の見解

第三者委員会のレポートが非常に詳しく書かれていたため驚きました。
念のためパソコンにダウンロードして保存しておきます。

テクノシステム事件では非常に多くのことを学びましたが、やはり大事なのは「トップの姿勢と器」です。

今回のことを糧にして少しでも有益な情報を提供できるように頑張ります。

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カナメ先生
この記事を書いた人
21歳から投資をはじめて投資歴23年。ソーシャルレンディング歴9年。運用資産4億円以上。
IT会社経営、薬局経営、新築アパート投資、株式投資、REIT投資、クラファン投資などの幅広い経験が武器であり、「凡人なりに出来ることをコツコツと堅実に行うこと」がモットーです。
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