ガイアファンディングセレクトファンド延滞案件は約2年間も開発許可が取れていない この記事を読み、ガイアファンディングセレクトファンドで延滞が発生していることを知りました。この延滞の原因が開発許可にあるようなので、アメリカ(特にカリフォルニア州)における開発許可について調べてみました。
まず、開発許可とは何を意味するのでしょうか?アメリカの法制度は連邦法(federal law)と州法(state law)から構成され、不動産の開発許可については州法で規定されます。今回はカリフォルニア州の開発案件であるため、該当するカリフォルニア州法を調べてみました。
the (State) Subdivision Map Act (Map Act)〜分譲用地規制法〜 |
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区画分けの要求事項と(カリフォルニア州に属する)市や郡の認可の流れを規定する法律 |
この法律では、「①Tentative map」、「②Final map」の二段階で開発許可が与えられると規定されています。
①Tentative map | 地形の状態や道路の配置、勾配、地役権の設定、通行権の設定等の様々な情報を含んだ計画書。許可は市や郡の自由裁量に委ねられる(discretionary)。 |
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②Final map | Tentative mapとは対照的に、許可は市や郡に自由裁量が無い(ministerial)。Tentative map取得を前提に、Tentative map内容と矛盾が無く、一定の基準を満たしてさえいれば、最終的な開発許可が与えられる。 |
「自由裁量がある(discretionary)」とは、市や郡にそのTentative mapに許可を与えるか否かを判断・審議する自由が与えらることを意味します。開発業者の視点では市や郡との密な交渉が必要とされ、時間・労力・金銭的負担すべてが重くなりやすいといえます。一方で、「自由裁量が無い(ministerial)」とは、明確な許可基準が法律や条令で規定されている為、不確実な要素は少ないといえます。
また、特にTentative map取得の重要性について、以下のような公的機関と民間機関それぞれの記述がみつかりました。
そして、案件毎に大きく幅はありますが、Tentative map取得までにかかる期間をカリフォルニア州不動産局は以下のように見積もっています。権利の無い(unentitled)更地(raw land)からだと1年強〜10年強、用途区分がある(with zoning)更地(raw land)からだと1年程度かかるようです。今回の案件は「既に2000年代に整備された土地である」とファンド説明にある一方で、「許可・用途の申請が完了」という記述に留まり、「用途が許可された(with zoning)」との記述まではありません。このプロセスのどこに位置するかはさらに詳細な情報が必要です。
ここから先はもう一歩踏み込んだ調査をしてみました。このTentative mapの許可はカリフォルニア州に属する市や郡に権限があります。今回の開発案件ではエルクグローブ市(City of ELK GROVE)が該当します。ホームページを確認すると、現在進行中の開発案件一覧を公開していました。非常にアクセスがしづらく、スマホでアクセスできたときのスクリーンショットが以下の画像です。
▼エルクグローブ市の現在進行中の開発案件一覧。地図上で具体的な場所も公開されています。
▼合計205案件を確認した結果、それらしき案件を発見。
Project No.:EG-16-018 | ”場所”-”年”-”連番”だと思われます。今回の初回ファンド開始時期と一致します。 |
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Description:Design Review for 11 lots | 今回の案件の戸数(11戸の戸建て住宅)と一致します。 |
Type:Residential Subdivision | 今回の案件(ファミリー向け戸建て住宅)と一致します。 |
Project Phase:Planning Review | Tentative map取得中を意味すると思われます。 |
▼APNs(Assessor's Parcel Numbers)という案件番号を発見。
APNs | 116−1440−051 |
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▼APNsを検索してみました。
PROJECT APPLICANT | Vita Equipoise Equity Partners LLC. Wenshin Chiu |
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PROJECT APPLICANTとは、プロジェクトの申込者を意味します。ガイアファンディング社の代表はケルビンチウ氏です。英語表記はKelvin Chiu。ファミリーネーム(苗字)が一致します。何かの偶然でしょうか。しかし、非常にアクセスが悪く、PDFファイルを開くことができませんでした。
結果的に、確証のある情報へ至りませんでしたが、仮に上記の案件が該当するのであれば、Tentative mapを2年間取得できずにいると推測できます。また、エルクグローブ市が公開する205案件の中に、2015年以前の枝番をもつPlanning Review段階(Tentative map取得中)の案件はありませんでした。かつ、2016年の枝番をもつ案件は上記含め二つだけあり、もう片方の案件はお寺の建設というかなり特殊なものでした。Tentative map取得に非常に長い期間を要していると推測できます。
「いつ開発許可がおりるのか?」を探るため、エルクグローブ市へ情報開示請求(Public Records Request)をしてみようと思います。進捗があれば報告します。
「許可の取得期間:1年強から10年強」という情報は、カリフォルニア州不動産局(California Department of Real Estate)という公的機関が作成した資料からの情報です。
【参考】Figure 7 - The Development Pipeline(34ページ)
http://bre.ca.gov/files/pdf/ResidentialSubdivisionsGuide.pdf
「許可・用途の申請が完了」という記述のある募集案件の箇所
→以下カリフォルニアローンファンドについて、「許可・用途の申請が完了」している旨の記載があります。
▼ローンファンド詳細>案件1について>概要>3行目
https://www.gaiafunding.jp/apl/fund/detail?fund_id=159
▼ローンファンド詳細>案件1について>概要>4行目
https://www.gaiafunding.jp/apl/fund/detail?fund_id=283